【夏の高校野球】仲間への想い胸に、短い夏が終わる。

みなさん、高校野球というものに関心はありますか?

あるよ!という方も、高校野球好きでない限りは、現地に赴いてというより、テレビで観るという方が多いかと思います。

テレビで放送されている夏の高校野球は、都道府県ごとに1校(北海道、東京都は2校)が代表として選出され、本大会、いわゆる“夏の甲子園”で、49校が戦っている様子をテレビ中継しているものです。そのため、どの都道府県も強豪校が揃って出場しています。

ただ、そのためか、夢の舞台と言われる甲子園に行くまでが本当に大変であるという話は、野球経験者なら当然、日本人であれば一度は必ず聞いたことがあるでしょう。
というのも、甲子園出場をかけて地方予選に出場する高校の総数はざっと4,000校に及びます。
これは、一つの都道府県あたりおよそ80校が出場し、そこでたった一つのイスを争うことを意味しています。
東北や山陰など、比較的大都市圏から離れた地域だと、一都道府県あたり50~60校と参加校数は小さくなりますが、例えば神奈川県は200前後の高校が県予選に出場してきます。
決勝に行くまでに何試合戦わなければいけないのか、途方にくれそうな数字ですが、
それを戦って勝ち抜いた先に、甲子園出場があるのです。

今回は各地激戦と呼ばれるそんな甲子園の予選会において、自分達のためだけでなく、ある一人の仲間のために甲子園出場をかけて戦った、ある高校を紹介しようと思います。

古賀竟成館という高校をご存知でしょうか。おそらく、知っている人は県内もしくは当校周辺地域に留まるのではと思います。

古賀竟成館は福岡県古賀市にある公立の高等学校です。そこの野球部には、女子マネージャーに舟木あみさんという女子生徒がいましたが、彼女は小児がんを患っており、闘病の末、17歳という若さで今年の5月30日に亡くなってしまいました。
同校の松永監督が「キャプテンは舟木あみだった」と言うほどに、
彼女はチームのムードメーカーであり元気印で、野球部のみんなにとって本当にかけがえのない存在だったそうです。

彼女が亡くなる直前、病床を見舞ったナインは、彼女に甲子園出場を誓いました。

「甲子園に連れて行くから」
「夏の大会でスコアを書いてほしい。勝ち進んで時間をつくるから絶対治して」

反応することもままならないくらいに彼女の状態は厳しかったようですが、
病室でそういった決意を口にしてくれた選手の手を、彼女はしっかり握り返したそうです。
彼女が亡くなったのは、そのわずか2日後のことでした。

竟成館ナインは、この夏の戦いに挑みました。
おそらく並々ならぬ想いを胸に秘め、この夏に向けて準備をしていったんだと思います。

しかし、現実はそう甘くはありません。
7月10日、筑豊緑地野球場で行われた福岡県予選2回戦で光陵高校と対戦。
10-0の5回コールド負け。まさに完敗というべき試合でした。

先発した谷口くんは「背番号1をもらったのに結果が出せず申し訳ない」と悔しさを滲ませ、
主将である緒方くんも「勝たせてあげられなくて悔しい」と口にしました。

あみさんは亡くなる直前まで、プロ野球中継を見ながらスコアをつけていたそうです。
「甲子園に行ってスコアをつけられなかったら困るでしょ」という病床での彼女の言葉は、
竟成館ナインが甲子園に行けると信じて疑わなかったからではないかと思います。

夏の高校野球は、夢の舞台である甲子園がどうしてもピックアップされることが多いですが、
テレビには映りきらない地方予選にもこういったドラマがあります。

一生懸命になることや、仲間を思いやることの大切さを、毎年気づかせてくれる高校野球ですが、

今年も、全国の高校球児たちから改めていろんなことを教えられそうな夏になりそうです。

最後に、初戦敗退はしましたが、この夏を戦い抜いた古賀竟成館高校野球部には、
「外で学んだことを野球に。野球で学んだことを外に。」という竟成館野球部の教えの下、
誇りをもって最後の高校生活を過ごしてほしいと思います。

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