もしケルシーがいなかったとしたら、ボブはもうこの世にいなかったでしょう。
大晦日の夜
犬の名前は、ケルシー。ゴールデンレトリバーです。そしてケルシーの飼い主がボブ。
大晦日の午後10時30分頃、ボブさんはケルシーとテレビ番組を見ていました。コマーシャルに入った時に、ボブは暖炉に入れる薪を外に取りに行きます。ちょっと行って返ってくるだけだったので、ジーンズにシャツを着た格好でスリッパを履いて外に出ました。
外には雪が降り積もっています。
その雪の上を数歩歩いた時に、ボブさんは足を滑らせてしまい転んでしまうのです。その時に打ちどころが悪く、首をひどく損傷してしまいます。自力で起き上がることすらできません。
ボブさんは助けを呼ぶために力いっぱい叫びました。しかし、隣の家までは約400メートル程の距離があります。そしてもう午後の10時30分を過ぎており、人通りもありません。この声が届くかは疑問でした。けれど、確かにその声は届いたのです。その声を聞きつけて、一目散にやってきたのは愛犬のケルシーでした。
ボブさんはとにかく叫びますが、だんだんと力を失っていき声も出なくなってしまいます。しかし、ケルシーはボブさんのために吠え続けたのです。結局ボブさんはこの後気が遠くなるほどの長い時間を雪の中で過ごすことになります。この時ケルシーはずっとボブさんのそばに寄り添っていました。
意識
ボブさんとケルシーはそのまま外で朝を迎えます。しかし、新年ということもあってか誰も外に出てきません。昼になってもボブさんに気がつく人はいません。その間、ケルシーはボブさんの体を温めるために、そばを離れることはありませんでした。時より顔や手を舐めてボブさんが眠らないようにもしました。
倒れてから19時間が経過した時に、ボブさんは意識を失ってしまいます。
ケルシーはそれでも吠え続けました。するとケルシーの鳴き声を聴いた隣人がようやくボブさんのことを見つけます。その時は年が明けた1月1日の午後6時30分頃でした。ボブさんが気を失って1時間経った頃。つまり、ボブさんが倒れてから実に20時間も経っていたのです。
すぐにボブさんは病院へと運ばれます。
集中治療室
ボブさんは低体温症に陥っていました。体の温度は20度を下回っており、死は目前に迫っています。また、首のほうの怪我も状態は悪く、体が麻痺しています。
集中治療室では担当医のコーレンさんがあることに気がつき、とても驚きました。
それはケルシーのおかげに他なりませんでした。