象が観覧通路へ出て緊急事態!興奮状態で指示を聞かない象を止めたのは余命わずかの男性だった
実際にこんなことが起こったのかと、にわかには信じられないようなお話を紹介します。
この実話の舞台は、上野動物園です。
観覧通路へ
上野動物園では、当時もアジアゾウの飼育をしていました。
昭和42(1967)年の今日、アジアゾウのインディラが同居していたジャンボとケンカをして、運動場から堀に突き落とされてしまいました。インディラは手すりに鼻を巻き付けて体を引き上げ、なんと入園者側の観覧通路に出てしまったのです。
— 上野動物園[公式] (@UenoZooGardens) 2017年3月14日
体の大きなゾウが入園者側の観覧通路に出てしまったとなれば、それはもちろん緊急事態ですよね。
上野動物園では、すぐに緊急体制がしかれたようです。
園内はただちに緊急体制がしかれましたが、インディラはゾウ舎に戻ってくれません。やがてマスコミのヘリコプターが低空で旋回をはじめ、インディラはその音で興奮してきました。ゾウが暴走したら大変な事故になってしまいます。飼育係のだれかが言いました。「そうだ、落合さんだ!」
— 上野動物園[公式] (@UenoZooGardens) 2017年3月14日
落合さんとはいったい誰なのでしょうか。そして、インディラはその後どうなったのでしょうか。
落合正吾さんはゾウ飼育班長でベテラン飼育係でしたが、病気で休職中でした。アドバイスを聞こうと飼育係員が自宅に行くと、「よし、すぐ行く!」と落合さんは寝間着のまま、とめる声も聞かずに動物園に向かいます。
— 上野動物園[公式] (@UenoZooGardens) 2017年3月14日
落合正吾さんという方は、ベテランの飼育係の方でした。
病気の体にムチを打ち、動物園へと駆けつけます。
ゾウ舎に着いた落合さんは、病人とは思えない声で「インディラ、ダメじゃないか。戻るんだ。」と一喝。とたんにインディラの興奮がおさまって目がおだやかになりました。「よし、良い子だ。さあ、帰るぞ。」落合さん到着がら10分もしないうちに、インディラは無事に収容されたのです。 pic.twitter.com/YLbqvIsPs8
— 上野動物園[公式] (@UenoZooGardens) 2017年3月14日
インディラにも、長年飼育をしてくれた落合さんの言葉は届きました。落合さんの存在の大きさに誰もが舌を巻くことになりましたが、その時の落合さんの体は健康とは程度遠い状態だったのです。
実は落合さんは重度の胃ガンで、8日後の3月22日に54歳で亡くなりました。混濁する意識のなかで、いとおしそうに「インディラのやつ…」とつぶやいていたそうです。
— 上野動物園[公式] (@UenoZooGardens) 2017年3月14日
そんな状態でインディラを止めに行った落合さんの動物愛は凄まじいものがありますね。心から動物のことを愛しているお方だったのでしょう。
上野動物園で起きた物語を紹介しました。