住職はこう言ったそうです。
「人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは、次の4つです。
人に愛されること。
人にほめられること。
人の役に立つこと。
そして最後に、人から必要とされること。」
これを聞いて、大山さんは納得したそうです。
健常者は、社会や他の人たちとの関わりを通じて、「ありがとう」と言ったり言われたりということがあるけれども、
障碍者は、施設で「ありがとう」と自分たちが言うことはあっても、言われることはほとんどないかもしれないと思ったからです。
現在、この会社の製造ラインのほぼ全てを障碍者の社員が担っています。
それはひとえに、文字や数字がきちんとわからなくても、色などで理解・識別できるように工程を工夫し、「作業目標」という概念を彼らが受け入れられるようになったからでしょう。
大山さんは言います。
「彼らの理解力に合わせた仕事の方法を考えてあげれば、安心して持てる能力を発揮して、生産性も決して健常者に劣らない戦力になってくれるのです。大切なのは、働く人に合わせた生産方法を考えることなのです」
加えて大山さん、とくに社員教育はしていないという。
健常者は障碍を持った人たちの理解力に合わせて仕事を用意し、
彼らが持つ「周りの人の役に立つことで幸せを感じる『共感脳』」を信じて、
成長を待っていればうまくいくと考えているとのこと。
「障碍者の存在は無視できないけれど、どう付き合っていけばいいかわからない」という人は、日本に多くいるんじゃないかと思います。
そういったなかなか触れられないテーマを、“働く”ということを通して解きほぐした大山さんのやってきたことはそう簡単なことではないですが、自分とは異なる立場にいる人たちを思いやることはやはりどんな時も大事だと思わせてくれますね。